花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに 小野小町
決まり字
はなの
解説
今を盛りと咲いていた花も、
しとしと降りしきる長雨の中で、色あせていく。
縁側に立って、それを見ている小野小町。
はあ…あの花の色のように、
私も年老いていくのね、といった内容です。
下の句に技工をこらしてあります。
「ふる」には「雨が降る」の「降る」と
「時が経つ・年をとる」という意味の「経る」が掛詞になっており、
「ながめ」には「長い雨」という意味の「ながめ」と、
「ぼんやり物思いに沈む」という意味の
「ながめる」が掛詞になっています。
しかし、そうした技巧を抜きに読んでも十分に美しく、
雰囲気のある歌です。
作者 小野小町
小野小町は平安時代仁明天皇の頃、
宮廷に仕えていたと言われる女流歌人です。
クレオパトラ・楊貴妃とならび世界三大美女の一人に数えられます。
六歌仙・三十六歌仙の一人で
出羽国の郡司良真の女、
11番小野篁の孫、美材(よしき)・
好古(よしふる)らの従妹といいますが、
実名も生没年もわかっていません。
はっきりしていることは大変な美人だったことと、
歌が得意だったことのみです。
『古今集』には小野小町が17番在原業平、
22番文屋康秀、12番僧正遍正ら取り交わした
贈答歌18首が残っています。
「小町」の名は姉が小野町(おののまち)で
妹が小野小町といったという説や、
固有名詞ではなく小野氏出身の采女
(うねめ 天皇や皇后のおそば仕える女官)を指す総称で、
小町は複数いたなど、諸説あります。